いまやメジャーな入試方式となった総合型選抜(旧AO入試)。文部科学省の「国公私立大学入学者選抜実施状況」によると、令和3年度(2021年)の大学入学者全体の50.3%が「学校推薦型選抜・総合型選抜」によるものでした。これは、「一般選抜」の49.5%をわずかに上回っています。私立大学入学者に絞り込むと「学校推薦型選抜・総合型選抜」の占める割合は58.2%で「一般選抜」の41.5%を大きく上回っています。今の大学入試で親世代と明らかに異なるのは、一般入試よりも推薦型の入試の方が多くなったということです。
総合型選抜とは
総合型選抜とは、大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)に合っているかどうかをじっくりと時間をかけて選考する入試方式です。「その大学の学部学科への適正や能力」「学ぶ意欲の強さ」「強い志望理由(当然専願)」「優秀さと将来性」などが選考のポイントになります。大学によって違いはありますが、志望理由書や調査書などの提出を求められるのが一般的です。選考は「面接」や「小論文」の他に、口頭や筆記による「学力試験」を実施する大学もあります。
安易に総合型選抜を選ぶと失敗する
大学のオープンキャンパスに足を運ぶと、総合型選抜の受験を勧めてくる大学が目立ちます。オープンキャンパスを担当する大学教授や学生から「キミなら総合型選抜で受かる」などと言われて浮かれてしまい、「学力を問わない」という条件に惹かれて安易に総合型選抜を選ぶと後悔する結果になりやすいので気をつけましょう。
以前は総合型選抜の入学者といえば、学業不振により留年や中退をする者が多く、できない学生のイメージが強かったのですが、最近では大学での学業成績優秀者の最上位層を総合型選抜による入学者が占めるようになってきました。つまり、総合型選抜での入学者の学力レベルは学校推薦型選抜や一般選抜での入学者と変わりません。
大学での学業成績を優秀な順に並べると、
- 総合型選抜からの入学者
- 学校推薦型選抜からの入学者
- 一般選抜からの入学者
- 付属高校からの入学者
という学力階層に分かれます。(あくまでも大雑把に分けていますので、もちろん当てはまらない学生もいます)
慶應義塾大学や早稲田大学などの難関私立大学ではこの傾向が強くみられるため、総合型選抜による入学者を増やす意向を示しています。国公立大学でも総合型選抜による選抜に力を入れはじめており、総合型選抜を受験する学生の学力レベルと難易度は一般選抜を上回っていることも珍しくありません。
総合型選抜では逆転合格は起こらない
「一般選抜は難しそうだから」とか「受験勉強したくないから」という理由で総合型選抜を選ぶのは危険です。
総合型選抜では、高校の成績が良くない者が逆転合格することは起こらないのです!
令和3年度国公私立大学入学者選抜実施状況のデータから、入学志願者数と合格者数から合格率を求めて高い順に並べると次の通りになります。
1位 59.6% 学校推薦型選抜
2位 47.0% 総合型選抜
3位 35.6% 一般選抜
学校推薦型選抜でも不合格になる受験生が意外と多い印象です。およそ20万人が不合格となっています。
総合型選抜では合格率は50%を切っています。不合格者は10万人を超えています。
学校推薦型選抜で受験する生徒は高校での成績が上位で内申点も高いのは言うまでもないことですが、それでもこんなに不合格者がいるのに、成績の良くない生徒が自己推薦型の総合型選抜で挑んでも難しいことは容易に想像できますよね。面接で「貴学を強く志望します!」と熱意を訴えても、「そこまで当校に入学したいのならそれ相応の準備をしてきてほしいから、一般でチャレンジしてみて」と試験官が思うのは自然なことではないでしょうか。
学校推薦型選抜や総合型選抜の推薦入試で不合格になってから一般選抜の準備をしても間に合いません。
総合型選抜の準備は高1から
総合型選抜を視野に入れるのなら、高3からでは間に合いません。高校入学と同時に準備を始めます。内申点を上げるために日々コツコツ勉強を継続することが何よりも重要です。内申点は高1の1学期から対象になりますので、総合型選抜以外に学校推薦型選抜も考えている場合は高2からでも遅すぎます。「『学力を問わない』のが総合型選抜だから内申点は関係ないのでは」という高校生がいますが、その認識は間違っています。総合型選抜は勉強したくない人への救いの道ではないのです。学力の足りない学生を入学させるのは大学にとってメリットがありません。なによりも大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)に合っている人物とは十分な学力を備える者であるはずです。だから「より以上」を目指して勉強を継続してください。
志望理由書や自己推薦文などに自己PRとして記載できる活動に打ち込んでいくことも大切です。活動内容が目指す大学・学部・学科で研究に力を入れている分野でなければほとんど評価されませんので、早くから将来のビジョンを考えることが大切です。
面接では自分の熱意をアピールするだけではなく、立ち振る舞いや挨拶、姿勢、表情、言葉遣いなども見られています。急にはできませんので、普段から意識して自分自身を躾していくと良いでしょう。
小論文対策は6ヶ月から1年位のトレーニング期間を設けるのが理想です。やってみるとわかりますが、とても時間がかかります。
最後は学力が決め手になります。レベルの高い問題に柔軟かつ即座に対応できるように思考力を鍛え、専門分野の知識を深く身につけておきましょう。