試験や試合に勝つ方法

試験や試合に勝つために最も必要なのは、実力をつけることである。

そんなことは当たり前だと言われそうですが、勉強や部活動の取り組み方を、この記事をきっかけに見つめ直してほしいのです。勉強でも部活動でも各々の目標があり、それに向かって日々努力を重ねていることでしょう。その『努力の仕方』で結果が変わることに異論はないと思います。

では、努力の仕方の重要なポイントについてお伝えします。

そのために、ある公立中学校のバスケットボール部でごく最近起きた実話を紹介します。

コーチの教えを忠実に守ったバスケ部の躍進

S中バスケ部は、公式試合はもちろん、練習試合でも一つも勝つことができずにいた。チームを指導するのは外部から招いたAコーチ。Aコーチはコーチとしての正式なライセンスを取るために勉強中である。ライセンスを取得したらS中バスケ部の指導を辞めて、自分の目指す道へ進む予定だ。だから、期限付きの指導であることは部員たちも承知していた。

Aコーチはチームを強くするためにできる限りのことをするつもりでいたが、いつまでも見てやれるわけではない。たとえ一時的に強くなったとしても、自分がいなくなればまた弱くなるのでは意味がない。自分がチームを去った後も、強くなり続けるチーム作りを行うことこそ、コーチとしての最も重要な役割なのではないかと考えた。Aコーチは部員全員にノートをつけるように指示した。そのノートには、考え方や練習方法、試合での気付きや反省などを記録し、頻繁に見直すように指導した。

間もなくして3年生が引退し、2年生中心の新チームとなった。Aコーチが就任する前から、部員たちには勝った経験がない。S中バスケ部には予選1回戦敗退が染みついていた。「自分のいるうちに勝つ経験をさせたい」Aコーチは熱心に指導した。

迎えた秋の新人戦、2点差でリードしたまま試合の残り時間は1分を切った。S中を応援する誰もが勝利がもうすぐそこまで来ていることに胸が高鳴った。しかし、一瞬の隙を突かれて同点にされ、歓声がため息に変わった。流れは相手に傾き、一気に逆転を許して試合が終わった。Aコーチは怒りと悔しさで爆発しそうな感情を押さえつけるために、ジャージのジッパーを一番上まで押し上げて顔を半分隠した。

このチームは結局1勝も挙げることができなかったが、Aコーチは資格試験に合格しチームを去った。新しい顧問が就任したが、バスケのことはあまり詳しくない。Aコーチが来る前がそうであったように、部員の安全に配慮するのみで、練習は選手たちに任せた。必然的に自分たちで練習メニューを組み立てるしかなかった。

部員たちはコーチの教えを記録したノートを練習に持参して、その内容に忠実に練習を続けた。彼らにはノート以外に頼るものがなかった。毎日ノートを読み返し、練習がブレないように気をつけた。部員たちで話し合うことが多くなるにつれ、自主性が増していった。

学年が上がるとすぐに大会を迎えた。1回戦負けが定番のチームで、コーチも不在となれば勝利を期待する者も少なかった。

しかし、1回戦目を勝った。その勝利に部員たちの父母は驚いた。さらに快進撃が続き、ベスト8まで勝ち上がったのだ。上位6校が県大会に出場できる。惜しくもベスト8で敗れてしまったが、この結果に部員たちは自信を持った。S中バスケ部員の父母たちは我が子を誇りに思った。

『守破離』は勝利へ続く道

この事例から学ぶことがあります。

それは『守破離』です。

守破離(しゅはり)は、日本での茶道、武道、芸術等における師弟関係のあり方の一つ。日本において左記の文化が発展、進化してきた創造的な過程のベースとなっている思想でもある。個人のスキル(作業遂行能力)を3段階のレベルで表している。

まずは師匠に言われたこと、型を「守る」ところから修業が始まる。その後、その型を自分と照らし合わせて研究することにより、自分に合った、より良いと思われる型をつくることにより既存の型を「破る」。最終的には師匠の型、そして自分自身が造り出した型の上に立脚した個人は、自分自身と技についてよく理解しているため、型から自由になり、型から「離れ」て自在になることができる。

武道等において、新たな流派が生まれるのはこのためである。

個人のスキル(作業遂行能力)をレベルで表しているため、茶道、武道、芸術等だけでなく、スポーツ、仕事、勉強、遊び等々、世の中の全ての作業において、以下のように当てはめることができる。

  • 守:支援のもとに作業を遂行できる(半人前) ~ 自律的に作業を遂行できる(1人前)
  • 破:作業を分析し改善・改良できる(1.5人前)
  • 離:新たな知識(技術)を開発できる(創造者)

S中バスケ部の躍進は、この『守破離』の徹底があったからこそと言えます。

Aコーチは実績こそありませんが優秀なコーチです。ノートに書かれたコーチの教えに忠実に練習を行った結果、バスケットボールが上手くなったのですから、疑う余地はありません。部員たちは守破離の『守』を徹底したのです。

顧問はいても指導者がいない状況は、部員たちの間で自主的に話し合うことを生み出しました。これは一人ひとりの自覚や責任感を高めるのと同時に、チーム内での自分の役割を明確にする効果があります。コーチの教えを忠実に守りながら、守破離の『破』のレベルへとチーム全体が成長していったのです。

S中バスケ部が守破離の『離』へと発展するかどうかはわかりません。もっともっと時間も経験も必要かもしれませんし、あっさりその域に達するかもしれません。

でもこれだけははっきり言えます。この経験は彼らのこれからの人生に豊かさをもたらすことでしょう。「自分で自分を強くできる力」を身につけたのですから!

勉強でも『守破離』は最高の教え

『守破離』は勉強においても最高の能力を発揮させる考え方です。

守破離の『守』は勉強の作法、つまり、正しい勉強のやり方や考え方を徹底的に身につけることです。ここが中途半端になると次の『破』へレベルアップできずに伸び悩んでしまいます。

『守』の内容は意外とたくさんあります。すぐにできることばかりですが、きちんと続けている人は少ないのです。守破離には継続するという基本的な姿勢が必要不可欠なのです。何事においても継続することには、どんな凡人も非凡に変えるパワーがあるのです。

もしあなたが大きな目標を掲げているのなら、『守破離』を徹底的に実践し続けてくださいね。

追記 S中バスケ部のその後

S中バスケ部は、その後7月の中体連で、準決勝まで勝ち上がった。そこで敗れたが、3位決定戦に勝利し、3年生の引退の花道を飾った。

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